読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

花やっこの世界

わたくしの創作と冒険

おふとんのぬくもりをあなたにも

読書感想文

  「中国行きのスロウ・ボート村上春樹

わたしとか、もしかするとあなたもそうかもしれませんが、毎日は半分ぐらい夢の中にいるようで、だいたい考えていることは出口を見つけられないままに空中を漂って、そういう思考の幽霊が部屋の中にうようよいるのです。

わたしは解決策を知りません。どんなことも解決しようとしません。

なぜならば面倒くさいからです。ふわりふわりと漂わせて眺めてしばらくするとだいたいどこかへ行ってしまうことも多いです。

この世界では、そういうやりかたを受け入れられない人もいます。

どんなちいさな問題(と思っている)ことも見逃さず、情報網をびっしりと張り巡らし、

まいにちまいにち「解決!解決!」と叫んでいるのです。

わたしやあなたは好きなことでまいにちいそがしい。

早くたどりつきたい場所がある。

 

大きな声の演説に耳をふさいで、わたしのボートに乗らなくちゃ。

好奇心をそそるうわさ話に足をとめてはいけないよ。

人生にまちがった方向があるとしたらそれは演説に耳をかたむけたとき。そしてその人についていこうなんて思ったとき。みんなひとつずつボートを持っているのだから、それに乗らなくちゃいけないと思います。

 

だれのものか分からない思考が世界にうようよさまよっていて、万が一、自分のボートを見失ったとき、さまよう思考のひとつを受けとってしまうかもしれない。そして、乗るべきではないボートに一緒に乗せられてしまうかもしれない。

 

 

中国行きのスロウ・ボート

なんとかあなたを

乗せたいな、

船は貸し切り、二人きり

 

水平線のむこうがわ

草原の国がまっている

知らない言葉 知らない人々

そのまま二人 行ったきり

 

この小さな短編集はわたしをどこにも連れて行ってくれず、見知らぬボートも迎えにこず、思考の群れに放り込んだだけですが、そこは朝目覚めた時のおふとんのようなぬくもりがあって、なかなか居心地がよく出られないのです。

 

f:id:hanayacco:20160311182534j:plain